「腸について」

「腸は外界との接点であり、臓器の核です。」

皆さんは「腸」と聞いてどんな臓器だと思い浮かべますか?

おそらく「食事で摂取したものを消化・吸収する臓器」と思い浮かべることでしょう。

確かにそうです。
しかし、腸には体全体の免疫細胞の約6割が存在するほか、腸内の神経細胞は約1億個あり、腸が他の臓器をコントロールする「第2の脳」と言われるほどの機能を持っています。

腸は外の世界からやってくる様々な物質や栄養を体のなかで最初に処理する場所、つまり外界との接点にある臓器であり、更に得たものを腸から他の臓器へ送り出す役割を持つ臓器です。

「ココロとカラダの調子を整えるために「腸」は大切」

心の安定に欠かせないセロトニンという神経伝達物質の90%以上が腸で作られています。

肉・魚・卵などの食物から摂取するたんぱく質から必須アミノ酸に替え、体外から取り込んだビタミンと共にセロトニンを作り出します。

交感神経は、腸の働きを抑制しますが、抑制しすぎると便秘を引き起こします。

例えば、旅行先で不慣れな環境に不安を感じると、脳がストレスを感じて交換神経が働きます。

その交感神経が働き過ぎると、腸の動きが低下して便秘になるのです。

また、腸の動きが低下することによって、悪玉菌が増殖して体が不調になることもあります。

一方、副交感神経は、腸の動きを活発になしますが、活発になりすぎると下痢を引き起こします。

例えば、緊張する場面で「失敗したくない」という強い不安(興奮)を抑えようとして副交感神経が働きます。

副交感神経が働き過ぎると、腸の動きが活発になって下痢(過敏性腸症候群)になることがあります。

「100兆個の最近が存在する腸内フローラが腸の働きを左右する」

腸内には約100兆個の「腸内細菌」が存在すると言われています。

腸内細菌は宿主である人と共生関係にあり、食物から得る栄養素をエサにして活動することで増殖します。

また、さまざまな代謝物を生成することで、人体の機能に影響を与えます。

腸内細菌は腸壁表面の粘膜に生息して“なわばり”を作り、まるで花畑(フローラ)のように存在することから「腸内フローラ」と呼ばれています。

腸内細菌は、その性質から「善玉菌」「日和見菌」「悪玉菌」の3種類に分類されます。

  • 善玉菌 代謝物が食物の消化や吸収に役立ち、カラダに良い影響を与える細菌(ビフィズス菌、ガセリ菌など)
  • 悪玉菌 便秘や下痢を引き起こしたり、代謝によって有害な毒素を作ることで体に悪い影響を与える細菌(ウェルシュ菌、ボツリヌス菌など)
  • 日和見菌 腸内細菌で最も多いグループで善玉・悪玉の数的に優勢な方に加勢する菌(ブドウ球菌、レンサ球菌など)

日和見菌は優勢な方に味方します。
そのため、健康な腸内状態を保つには、善玉菌が悪玉菌よりも多い状態を維持する必要があります。

もしも悪玉菌が善玉菌より優勢になったり、偏った食事や運動不足などで、腸内細菌の多様性が失われたりすると腸内細菌のバランスが崩れるため、体に対して悪影響を及ぼすことになります。

「腸もみと脳腸相関について(脳と腸は互いに影響しあう)」

腸内で作られる毒素や神経伝達物質、タンパク質などが脳に送られることで、その機能に影響を与えます。また、ストレスなど脳の働きに問題があると、自律神経のバランスが崩れ、腸管の働きが乱れることで、便秘や下痢などを引き起こします。

腸の働きが正常であれば、腸管の収縮運動(伝播性消化管収縮運動「MMC」と呼びます)に伴って殺菌性のある消化液が腸内に分泌され、悪玉菌を減らす働きが生まれます。

自律神経のうち、カラダの活動時や興奮時に優位になる交感神経が働くと腸管の動きが抑えられ、身体を休めたりリラックスした時に優位になる副交感神経が働くと、腸管の動きが活発になります。

この自律神経が乱れると腸の働きを正常にコントロールできなくなり、腸管収縮による消化液の分泌に不調をきたすことから悪玉菌が増えてしまいます。

脳と腸は自律神経や内分泌、免疫などを介して互いに影響を及ぼしあっていて、脳から腸への情報伝達(脳→腸シグナル)と、腸から脳への情報伝達(腸→脳シグナル)が、一方的ではなく双方向的に影響を及ぼしているのです。
こうした脳と腸の関係を「脳腸相関」と呼びます。

そのため、心理的ストレスが腸に影響を及ぼすだけでなく、腸内環境が悪いと脳が不安感や抑うつ感を感じるようにもなります。

腸の不調を根本的に改善するためには、ライフスタイルを整えることが重要な一方で、マッサージも効果的です。

腸管を外部から刺激することは腸管神経系に影響を与え、腸と脳を密接につなぐ自律神経の乱れが整い、リラックス効果を高める副交感神経が優位になる効果が期待できます。

これにより血管が拡張して血行が良くなり、腸内細菌のバランスが整うことで体全体の不調を改善できます。

また、腸に効果があるツボを指圧することで、さらに効果が期待できるとも言われています。

参考書籍:江田証「新しい腸の教科書」池田書店,2021年3月

参考サイト:日本成人病予防協会「腸内環境 ~新しい生活様式~」